新卒・新入社員を迎える企業は、彼らに何を期待しているのでしょうか。様々な調査結果から、企業が新入社員に求める資質や能力、期待することが明らかになっています。これらを知ることで、新社会人としてのスタートをより良いものにすることができるでしょう。
新入社員に求めることランキング
企業が新入社員に求める資質や能力は、時代とともに変化しています。しかし、いくつかの調査結果を見ると、普遍的に求められる要素があることがわかります。これらの要素を理解することで、新入社員としての心構えや成長の方向性が見えてくるでしょう。
新入社員に最も求められるのは「積極性・意欲」「コミュニケーション能力」「素直さ」の3つが上位を占めています。特に「積極性・意欲」は28.0%で1位となっており、企業が新入社員に対して前向きな姿勢を最も重視していることがわかります。
職種別に見る求められる資質
新入社員に求められる資質は、職種によっても異なります。管理部門、営業部門、技術部門など、それぞれの職種で重視される能力や資質には特徴があります。
職種 | 1位 | 2位 | 3位 |
---|---|---|---|
管理部門全般 | 積極性・意欲 | コミュニケーション能力 | 素直さ |
経理 | 素直さ | 積極性・意欲 | コミュニケーション能力 |
人事 | コミュニケーション能力 | 積極性・意欲 | 素直さ |
総務 | 積極性・意欲 | コミュニケーション能力 | 素直さ |
士業/士業事務所 | 積極性・意欲 | コミュニケーション能力 | 専門スキルや知識 |
この表からわかるように、どの職種でも「積極性・意欲」と「コミュニケーション能力」が上位にランクインしています。ただし、経理部門では「素直さ」が1位、人事部門では「コミュニケーション能力」が1位となるなど、職種によって微妙な違いがあります。また、士業/士業事務所では「専門スキルや知識」が3位にランクインしており、専門性が求められる職種ならではの特徴が表れています。
年代別に見る期待の違い
企業の管理職や人事担当者の年代によっても、新入社員に期待することには違いがあります。年代によって価値観や経験が異なるため、求める資質や能力にも差が生じるのは自然なことです。
- 20代管理職:柔軟性やチームワークを重視する傾向
- 30代管理職:積極性と専門スキルのバランスを求める傾向
- 40代管理職:コミュニケーション能力と主体性を重視する傾向
- 50代以上管理職:素直さと基本的なビジネスマナーを重視する傾向
年代が上がるにつれて、「素直さ」や「ビジネスマナー」といった基本的な資質を重視する傾向が強まります。一方、若い世代の管理職は「柔軟性」や「チームワーク」など、変化に対応する能力を評価する傾向があります。このような違いを理解しておくことで、上司の年代に合わせたコミュニケーションが取りやすくなるでしょう。

どの職種でも「積極性・意欲」と「コミュニケーション能力」が求められるのは、これらが仕事の基本だからです。特に新入社員は経験やスキルが不足していても、前向きな姿勢と周囲とうまく協働する力があれば、成長していける可能性が高いと評価されます。
企業が期待することのアンケート調査
様々な企業や団体が、新入社員に対する期待についてアンケート調査を実施しています。これらの調査結果から、企業が新入社員に期待することの全体像を把握することができます。
最新の調査結果によると、企業が新入社員に期待することのトップは「主体性」(73.5%)で、次いで「規律性」(33.7%)、「実行力」(32.3%)となっています。また、入社時点までに身につけてほしいスキルとしては「ビジネスマナー」(69.8%)と「パソコン」(60.4%)が上位に挙げられています。
企業の人事担当者の声
アンケート調査では、企業の人事担当者からの具体的な声も集められています。これらの生の声から、新入社員に対する期待がより具体的に見えてきます。
- 「積極的なコミュニケーションや交流、積極的な姿勢を持ってほしい」
- 「自分だけで解決しようとしない姿勢を持ってほしい」
- 「分からないことをそのままにしないでほしい」
- 「素直な姿勢で指示されたことを実行してほしい」
- 「当たり前のことを馬鹿にせずにちゃんとやってほしい」
- 「前向きな気持ち、明るさ、くじけない気持ちを持ってほしい」
- 「主体的な姿勢で学ぶ意欲を持ってほしい」
これらの声からわかるのは、企業が新入社員に対して、専門的なスキルよりも「姿勢」や「態度」を重視していることです。特に「積極性」「素直さ」「前向きさ」「主体性」といった要素が繰り返し挙げられています。これは、専門スキルは入社後に身につけることができるが、基本的な姿勢や態度は個人の資質に関わる部分が大きいと考えられているためでしょう。
理想の新入社員像
企業の人事担当者が思い描く理想の新入社員像も、アンケート調査から明らかになっています。ある調査では、理想の新人のイメージに近い芸能界・文化人の1位は芦田愛菜さん、スポーツ界の1位は大谷翔平さんという結果が出ています。
理想の新入社員の特徴 | 具体的な行動例 |
---|---|
明るい挨拶ができる | 朝の挨拶を元気よく行う、目を見て話す、笑顔で対応する |
報連相ができる | 業務の進捗を定期的に報告する、困ったことをすぐに相談する、関係者に情報を共有する |
誰にでも感謝を伝える | 助けてもらったときに「ありがとう」と言う、教えてもらったことに対して感謝の気持ちを表す |
主体的に行動する | 指示を待つだけでなく自ら考えて行動する、課題を見つけて提案する |
素直に学ぶ姿勢がある | 指摘されたことを素直に受け止める、失敗から学ぼうとする、メモを取る習慣がある |
これらの特徴は、専門的なスキルというよりも、社会人としての基本的な姿勢や態度に関するものです。特に「明るい挨拶」「報連相」「感謝の気持ち」といった基本的なコミュニケーションに関する要素が重視されています。これらは、どんな職種や業界でも共通して求められる基本的な資質と言えるでしょう。
新入社員自身の期待と企業の期待
新入社員自身も、社会人生活に対して様々な期待を持っています。興味深いのは、新入社員の期待と企業の期待には、共通点もあれば相違点もあるということです。
2025年度の新入社員調査によると、入社に向けた期待の1位は「色々なことを学び成長できる」(70.0%)、2位は「給料がもらえる」(58.2%)、3位は「社会の役に立てる」(42.1%)となっています。また、別の調査では「仕事内容に求めること」として「人間関係の良好な職場で働くこと」が最も多く、次いで「仕事を通じて成長できること」となっています。
新入社員の価値観と企業の期待のギャップ
新入社員の価値観と企業の期待には、いくつかのギャップが存在します。このギャップを理解することで、お互いの期待を調整し、より良い関係を築くことができるでしょう。
- 新入社員:「プライベートを優先したい」という意向が強い
- 企業:「主体性」「実行力」を発揮してほしいと期待している
- 新入社員:「人間関係の良好な職場」を求めている
- 企業:「積極的なコミュニケーション」を求めている
- 新入社員:「自己成長」を期待している
- 企業:「素直な姿勢」「基本的なマナー」を期待している
例えば、新入社員は「プライベートを優先したい」という意向が強い一方で、企業は「主体性」「実行力」を発揮してほしいと期待しています。また、新入社員は「人間関係の良好な職場」を求めていますが、企業は新入社員自身が「積極的にコミュニケーション」を取ることを期待しています。
このようなギャップは、お互いの理解不足から生じることが多いです。新入社員は企業の期待を理解し、企業は新入社員の価値観を尊重することで、より良い関係を築くことができるでしょう。
Z世代の特徴と企業の対応
近年の新入社員の多くは「Z世代」と呼ばれる世代に属しています。Z世代(1990年代後半~2010年代前半生まれ)は、デジタルネイティブであり、価値観や働き方に独自の特徴を持っています。
Z世代の特徴 | 企業の対応策 |
---|---|
リスク回避傾向が強い | 失敗を恐れずチャレンジできる環境づくり、小さな成功体験の積み重ね |
プライベート重視の傾向 | ワークライフバランスを尊重する制度の整備、柔軟な働き方の提供 |
デジタルツールに慣れている | 最新のツールやテクノロジーの導入、デジタルスキルを活かせる業務の割り当て |
主体的な言動を起こしにくい | アクションを起こす場面を意図的に設計、小さな成功体験の提供 |
「貰い手意識」が強い | 自ら機会を取りに行く意識づけ、主体性を育む環境の整備 |
Z世代の新入社員は、「まだ見ぬリスク」を避けてリターンを得るための「貰い手意識」が強く表出する傾向があります。彼らは自分の体力気力を極力減らして、多くの給料や成長を得たいと考えがちです。そのため、自ら機会を取りに行くよりも、会社や上司から「もらってしまう」方が安全な選択肢だと考える傾向があります。
企業側は、このようなZ世代の特徴を理解した上で、彼らが主体的に行動できるような環境づくりが求められます。「まずはやってみよう」「失敗から学ぼう」という育成スタンスは、Z世代のリスク警戒を強め、行動をむしろ狭めてしまう可能性があるため、注意が必要です。
新入社員が成功するための心構え
企業の期待を理解した上で、新入社員として成功するためにはどのような心構えが必要でしょうか。調査結果から見えてくる、新入社員が持つべき心構えについて考えてみましょう。
新入社員が成功するためには、「積極性・意欲」「コミュニケーション能力」「素直さ」「主体性」「実行力」の5つの要素を意識的に高めていくことが重要です。これらは企業が新入社員に最も期待する要素であり、どの職種や業界でも共通して求められる基本的な資質です。
具体的な行動指針
新入社員として成功するための具体的な行動指針を、調査結果から導き出してみましょう。これらの行動を意識的に実践することで、企業の期待に応えることができるでしょう。
- 明るい挨拶を心がける:朝の挨拶を元気よく行う、目を見て話す、笑顔で対応する
- 報連相を徹底する:業務の進捗を定期的に報告する、困ったことをすぐに相談する、関係者に情報を共有する
- 感謝の気持ちを伝える:助けてもらったときに「ありがとう」と言う、教えてもらったことに対して感謝の気持ちを表す
- 主体的に行動する:指示を待つだけでなく自ら考えて行動する、課題を見つけて提案する
- 素直に学ぶ姿勢を持つ:指摘されたことを素直に受け止める、失敗から学ぼうとする、メモを取る習慣をつける
- 基本的なビジネスマナーを身につける:時間を守る、適切な言葉遣いをする、身だしなみに気を配る
- パソコンスキルを向上させる:基本的なオフィスソフトの操作を習得する、タイピングスピードを上げる
これらの行動指針は、特別な才能や能力がなくても、意識的に実践することができるものばかりです。日々の業務の中で、これらの行動を習慣化していくことが大切です。
長期的なキャリア形成の視点
新入社員として成功するためには、短期的な適応だけでなく、長期的なキャリア形成の視点も持つことが重要です。調査結果からは、新入社員自身も「成長」や「学び」に対する期待が高いことがわかります。
長期的なキャリア形成のポイント | 具体的な取り組み |
---|---|
自己の強みを理解する | 自己分析を行う、周囲からのフィードバックを積極的に求める |
専門性を高める | 業務に関連する資格取得を目指す、専門書や業界誌を読む習慣をつける |
人的ネットワークを構築する | 社内外の勉強会や交流会に参加する、先輩社員とのコミュニケーションを大切にする |
目標設定と振り返りを行う | 短期・中期・長期の目標を設定する、定期的に自己の成長を振り返る |
変化に適応する力を養う | 新しい技術や知識に積極的に触れる、多様な経験を積む |
長期的なキャリア形成の視点を持つことで、日々の業務に取り組む姿勢も変わってきます。「今の仕事が将来どのように役立つのか」「この経験から何を学べるのか」という視点で業務に取り組むことで、より充実した社会人生活を送ることができるでしょう。

新入社員の皆さんに伝えたいのは、企業が求めているのは完璧な人材ではなく、成長する可能性を持った人材だということです。失敗を恐れず、素直に学び、積極的に行動する姿勢があれば、必ず成長できます。
企業が新入社員に求めることのランキングや期待することのアンケート調査結果から、新入社員として成功するための重要なポイントが見えてきました。「積極性・意欲」「コミュニケーション能力」「素直さ」「主体性」「実行力」といった要素が、どの職種や業界でも共通して求められています。
また、新入社員自身も「成長」や「学び」に対する期待が高く、企業の期待と共通する部分も多いことがわかりました。一方で、「プライベート重視」や「リスク回避傾向」など、企業の期待とのギャップも存在します。
新入社員として成功するためには、企業の期待を理解した上で、具体的な行動指針を実践していくことが大切です。同時に、長期的なキャリア形成の視点を持ち、自己の成長を意識的に促進していくことも重要です。
社会人としてのスタートは誰にとっても不安と期待が入り混じるものですが、企業の期待を理解し、自己の成長を意識的に促進していくことで、充実した社会人生活を送ることができるでしょう。
よくある質問
回答 「積極性・意欲」が最も求められており、次いで「コミュニケーション能力」「素直さ」が上位にランクインしています。これらは専門的なスキルよりも、基本的な姿勢や態度に関するものです。

専門スキルは入社後に身につけられますが、積極性や素直さといった基本姿勢は自ら意識して育むものです。まずはこの基本姿勢を大切にしましょう。
回答 はい、職種によって重視される能力に違いがあります。例えば、経理部門では「素直さ」が最も重視され、人事部門では「コミュニケーション能力」が最も重視される傾向があります。
回答 新入社員は「プライベート重視」「人間関係の良好な職場」を求める傾向がある一方、企業は「主体性」「積極的なコミュニケーション」を期待しています。このギャップを理解し、調整することが重要です。
回答 Z世代はリスク回避傾向が強く、「貰い手意識」が特徴的です。デジタルツールに慣れている一方で、主体的な行動を起こしにくい傾向があります。

Z世代の特徴を理解した上で、自分の強みを活かし弱みを補う意識を持つことが大切です。特に「主体性」を意識的に高める努力をしましょう。
回答 明るい挨拶、報連相の徹底、感謝の気持ちを伝える、主体的に行動する、素直に学ぶ姿勢を持つことが重要です。これらの行動を日々の業務の中で習慣化していくことが成功への近道です。