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春夏秋冬 しあわせを呼ぶ生き方
著 者
吉沢久子
定 価
  本体920円+税
発 行
  2018.1
ISBN
  978-4-7593-1575-2
春夏秋冬 しあわせを呼ぶ生き方
小さなしあわせを喜ぶ生き方が100年つながって多くの人に広がっていく!

本書は2018年1月に100歳を迎える著者の前向きな生き方を、身近な具体例を通して、読みやすく親しみやすいエッセイにまとめたものです。前向きに、なんでもいいほうに考える。不便や不具合をグチらず、むしろ面白がって自分なりに工夫する。新しいことに好奇心をもって調べたり試したりする。いくつになっても自立した人間として、甘えず、あきらめず、ひとにぎりの努力をする。旬の食べ物を楽しみに、食いしんぼう精神を発揮する。おおらかに、世代を超えた人づきあいを楽しむ。――小さなしあわせを喜ぶ生き方が100年つながって、そのしあわせが多くの人に広がっていきます。早春・春・夏・秋・冬の5章に分け、それぞれに著者が好きな料理を「わが家のごはん」として付け、基本的に1項目を見開き2ページで構成した新書判。


しあわせを呼ぶ前向き思考*早春の章
 願い事は小さく持つ
 立春大吉、小鳥食堂も盛況
 終活したら気楽になって長生きしている
 注意力の衰えも未知の自分との出会い
 楽を望んで甘えていたら、下降線をたどるだけ
◎わが家の早春ごはん
 私流の七草がゆは日常食
 頭に浮かぶのは蕗のとうのことばかり

しあわせを呼ぶ楽しみ上手*春の章
 土があれば、花より野菜
 虫たちも自由に生きている庭がいい
 もしも鳥語が話せたら
 野菜をよく知るための勉強
◎わが家の春ごはん
 毎日でも飽きない新玉ねぎ
 私の春キャベツ料理

しあわせを呼ぶ工夫力*夏の章
 老人だって、うなぎもステーキもたべたい
 井戸水が出なくなって、いいことを考えた
 一人暮らしでも、一人になりたいとき
◎わが家の夏ごはん
 夏負けには冷たいお茶漬け
 凍ったトマトはスープが一番

しあわせを呼ぶ好奇心*秋の章

 転がり込んだのは、みょうがの茂み
 逆境の中でもたくましく生きる植物たち
 箸袋の裏に書かれた料理メモ
 わがままな人向きのグループ旅行
◎わが家の秋ごはん
 自家製切り干し大根のおかゆ
 熟れた柿をソースに使うアイデア

しあわせを呼ぶ暮らしの知恵*冬の章
 自慢の室内畑の季節がやってきた
 気持が沈んだときはターシャ・テューダーの絵本
 自分の家から火を出さないために
 一時間以内の小出しのていねい掃除
◎わが家の冬ごはん
 私のお気に入り朝食献立
 百歳近くなってもお餅には目がない


このごろの私は、探しものに時間を取られることが多い。しかも、やっと見つけた場所は、毎日何度となくそこを見ているはずのところであったりして、自分に腹が立つ。
年をとったからだと、かんたんに割り切って諦めるのも潔いけれど、人に頼って生きるわけにもいかない一人暮らしには、注意力を失うことは決定的なマイナスになる。自分の意思でからだを動かすことができる間は、自分のことは自分でまかないたい。
いろいろなことが起こるけれども、それも未知の自分との出会いのようで面白い。さて、もの忘れ対策を真剣にたのしく考えよう。

九十六歳の春、はじめて心臓の不調で検査を受けたとき、担当の先生から意外なことをいわれた。薬を全部やめてみたら、とのこと。私の年齢からも血圧が少しくらい高いのは普通のことだといわれ、とたんに頭に浮かんだのが、「グレープフルーツがたべられる」だった。
毎日、自分で血圧を測るようにといわれ、一か月以上朝晩測っているが、何と、平常。すぎたことは、次の暮らしの参考にすればいい。私は専らグレープフルーツが毎日たべられることを喜んでいる。
人間の最後まで残る欲望とたのしみは「食」だと思う。何でもたべられるしあわせはかけがえなく大きい。

失ったものは惜しんでも何にもならない。今ある力を明日に持ち越す、そこに最大限の努力をすればいい、と考える。
朝食ひとつにしても、若い頃よりずっと豊かだし、手もかけておいしくたべている。それだけでも、なんとしあわせではないかしら。

秋から冬にかけては「室内畑」を作る時期でもある。小さなプランターに、わが家製腐葉土を入れ、春菊の種をびっしり蒔く。置き場所は冬の寒い朝でも凍らないところ。わが家では一日じゅう暖房をしているリビングの日当たりのよいところ。ガラス戸越しの、昼のあたたかい日ざしを受けて、すぐに芽を出す種は、たっぷり水をやっておくと、すいすい伸びてくる。
これは私の自慢の室内畑。といっても、特別にどうというものでもない。ただ、足が弱くなってきて、料理をしながらほしいものを思いついて庭に取りに行く、というのも不自由になり、今の自分の台所仕事にふさわしい工夫を自慢しているだけなのだ。
一人の食卓に必要なつま野菜の量は知れたもの。でも、あるかないかでは大きく違う。これが結構食卓を豊かにしてくれるのがしあわせだ。

ちょっと気持がしずんだとき、私はよくターシャ・テューダーの絵本を開く。ターシャの描く人物は、十九世紀風の服装をしている。よく働いて、慎ましい暮らしの中でたのしみを作り、周囲の人たちと仲良く、生き生きと月日をすごしている。そんな人々の暮らしが描かれている絵本を眺めているだけで私はほっとして、自分も絵の中に溶け込んでいるような気分になる。
季節が持ってきてくれる自然の豊かさ大きさ、風や雨や雪やその他、ときにはほしくないものも自然は持ってくるけれど、それが次の季節の喜びをつくってくれるものであると、説教がましさも説明も一切なく、ターシャ流の美しい絵で静かに語っている。

何度読み返しても、新しい発見がある味わい深いエッセイ集です。著者の生き方の根底にある、前向きで喜び上手な心の姿勢が、あたたかいタッチで描かれた身近な出来事を通して伝わってきます。祝百歳!食いしんぼうで好奇心いっぱいの生き生きした暮らしに、ぜひ、出合ってください。


吉沢 久子(よしざわ ひさこ)

1918年、東京生まれ。文化学院文科卒。若い頃から料理や家庭生活の知恵、暮らしの文化に関して、執筆や講演、ラジオ・テレビ出演などを通じて幅広く活躍。加えて近年は、自身の体験をもとに老いの生き方を現在進行形で発信し、世代を超えて多くの読者の共感と信頼を集めている。著書に『100歳の生きじたく』(さくら舎)、『ほんとうの贅沢』(あさ出版)、『もうすぐ百歳、前向き。』『吉沢久子 27歳の空襲日記』(いずれも文春文庫)、『94歳。寄りかからず。前向きに おおらかに』『95歳。今日をたのしく。もっと前向きに』『96歳。今日を喜ぶ。一人をたのしむ』『97歳。いくつからでも人生は考え方で変わります』『98歳。心して「一人」を楽しく生きる』(年齢シリーズは『90歳。一人暮らしをたのしんで生きる』から8冊ある)、『99歳からあなたへ いつまでも変わらない大切なこと』『今日をいっしょうけんめいで生きる』『老い方上手の楽しい台所』『ふつうで素敵な暮らし方』(以上、海竜社)ほか多数がある。





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